日本の研究人材・科学技術人材について考える

日本の研究人材・科学技術人材政策について考える

日本の研究人材・科学技術人材をめぐる状況や施策等について、政府や関係機関の公表データなどから考えたことを記録しています。

科学技術人材施策推進の手法

科学技術人材政策とは

 人材政策に関する既存の定義としては、日本大百科全書(ニッポニカ)において、「国家的視野からみた、社会における人材の養成、再訓練、配置に関する政策」と定義されている。科学技術人材に関する人材政策についても、同様の視点から整理することが可能と考えられる。具体的には、大学院における人材育成などは「養成、再訓練」に、適切な人材配置のためのポストや待遇の確保、人材配置の前提となる流動性の向上などは「配置」に関する政策として整理することができると考えられる。

 日本の科学技術人材をめぐる主な政策課題としては、博士号を持つ高度研究人材の育成と活躍の場の確保が挙げられることから、これに対応する科学技術人材政策についても、人材育成とポスト・待遇の確保、流動性の向上という観点から見てみることが重要と考えられる。また、同じく重要課題である女性研究者の活躍促進についても、これらのそれぞれの観点からの対応を行うことが必要である。

 

人材の育成制度と支援策

 科学技術人材の育成に関しては、主に大学院教育の制度の下で行われている。特に、高度研究人材の育成には、博士課程での教育がその中心的役割を果たしている。こうした大学院教育の制度は、人材育成システムとして一定の質の確保が必要であることから、博士課程の開設等には文部科学大臣の認可を要するなど、学校教育法等の下で各種規制に服することとなる。人材育成システムの確立に関しては、主に規制的な手法での政策が採られている。

 また、博士課程学生への経済的支援に関しては、奨学金などの学生としての側面に着目したものと、特別研究員(DC)などの研究者としての側面に着目したものが存在するが、いずれも助成的な手法によって行われている。

 

ポスト・待遇の確保、流動性の向上

 高度研究人材や女性研究者のポストや待遇の確保に関する政策は、研究者を雇用する大学、民間企業、公的研究機関等を政策対象としており、主に補助事業による支援策によって、望ましい取組みへの誘導が図られている。国におけるガイドラインの策定や補助の際の要件化等によって、一定の基準の確保や待遇の向上を図るような取組も行われているが、一義的には各主体の自律的な判断にゆだねられるべきものであることから、間接的に取組を促すものとなっている。

 流動性の向上に関する政策は、雇用主体である大学等と研究人材の双方を対象として実施されており、情報提供やマッチング支援などのサービスの提供による支援など、主に支援的手法による取組が行われている。

 

政策全体の俯瞰の重要性

 科学技術人材政策は、科学技術政策の一環として実施されるものており、科学技術・イノベーション基本計画の下で、目標が設定され、計画的に取組が進められている。

ura49.hatenablog.com

 

 以上のように、科学技術人材政策は、規制、助成、支援、行政計画といった、様々な手法が適切に組み合わされて推進されている。人材の育成とポスト・待遇の確保等では、政策課題や対応策も異なっており、それぞれ政策課題に応じた分析等が必要であるが、一方で、研究者ポストの不安定さが博士離れの要因となっていたり、博士課程教育の段階から産学連携を進めれば民間企業へのキャリアパスを選択する者が増えるなど、それぞれの課題や対応策は密接に関係しており、各課題の抜本的な解決を図るためには、上記の様々な施策が全体として機能するような俯瞰的な分析・検討が重要であると考えられる。