日本の研究人材・科学技術人材について考える

日本の研究人材・科学技術人材政策について考える

日本の研究人材・科学技術人材をめぐる状況や施策等について、政府や関係機関の公表データなどから考えたことを記録しています。

地方自治体、大学、公的研究機関(科学技術人材政策の推進体制⑤)

人材政策における地方自治体の役割

 科学技術・イノベーション基本法では、国の責務として、科学技術・イノベーション創出の振興に関する総合的な施策を策定・実施を求めているが、地方自治体に対しても、「国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策の策定・実施」をその責務として規定している。このように、地方自治体も、科学技術政策の推進主体としての役割を担っており、各都道府県においては、科学技術担当部署が置かれているほか、科学技術会議等を設けて、総合計画とは別に、科学技術政策に関する計画等を策定している例もある。そうした計画においては、自治体における研究開発プロジェクト等の実施に関することに加え、大学生への支援や、小中高校生等を対象とした将来の人材育成に関する施策が盛り込まれていることも多く、地方自治体が人材政策の推進主体としても役割を果たしていることが見て取れる。

 地方自治体においては、小中高等学校等の初等中等教育段階を中心に、将来の科学技術人材育成に関する施策が進められているほか、主に都道府県レベルにおいては、公立大学や公設試験研究機関における研究人材や、地域の企業において研究開発をリードする人材の確保等に関する施策が、それぞれの実情に応じて推進されている。

 地方自治体における将来の人材育成に関する取組は、SSH等の国における施策との連携や役割分担が図られている一方で、人材の流動化に関する施策に関しては、国における施策との連携協力をさらに進められる可能性があると思われる。地方自治体における地域産業等の研究ニーズ等と若手研究者の優れた研究成果等とのマッチングなどを、高度研究人材の流動性向上に関する施策として、国と自治体との連携の下で、より組織的・効果的に推進することなども検討に値するものと思われる。

 

大学・公的研究機関における取組の推進

 大学・公的研究機関は、科学技術活動・研究活動の重要な実行主体であるが、人材政策の観点からも、研究者のポストや待遇を直接的に決定できる重要な実施主体である。特に、国立大学や研究開発法人については、その人事給与マネジメントの在り方が、多くの研究者のポストと待遇に重大な影響を及ぼすものであり、人材政策の直接的な実施主体と言っても過言ではないと考えられる。

 また、大学は、人材育成に関しても、博士課程学生への教育を通じて、直接的に取組を推進する主体であることは論を待たないが、公的研究機関についても、ポストドクターの受入れなど、国の政策の方向性を踏まえつつ、若手研究者の人材育成に関する取組を主体的に推進している。なお、科学技術・イノベーション基本法においては、「研究開発法人及び大学等の責務」として、「科学技術の進展及び社会の要請に的確に対応しつつ、人材の育成並びに研究開発及びその成果の普及に自主的かつ計画的に努める」こととされており、人材の育成に関しても重要な推進主体として位置づけられていると考えられる。

 特に大学に関しては、人材政策における重要課題である、現役学生の博士離れへの対応と、若手研究者のポストの確保・安定化の双方について、国立大学を中心とした研究大学の取組は不可欠であり、人材政策推進のための重要な実施主体とての取組が強く求められる状況となっている。

 

(参考)科学技術・イノベーション基本法(平成7年法律第130号)

地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、振興方針にのっとり、科学技術・イノベーション創出の振興に関し、国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。

(研究開発法人及び大学等の責務)

第六条 研究開発法人及び大学等は、その活動が科学技術の水準の向上及びイノベーションの創出の促進に資するものであることに鑑み、振興方針にのっとり、科学技術の進展及び社会の要請に的確に対応しつつ、人材の育成並びに研究開発及びその成果の普及に自主的かつ計画的に努めるものとする。

2 研究開発法人及び大学等は、その活動において研究者等及び研究開発に係る支援を行う人材の果たす役割の重要性に鑑み、これらの者の職務及び職場環境がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、これらの者の適切な処遇の確保及び研究施設等(研究施設及び研究設備をいう。以下同じ。)の整備に努めるものとする。