日本の研究人材・科学技術人材について考える

日本の研究人材・科学技術人材政策について考える

日本の研究人材・科学技術人材をめぐる状況や施策等について、政府や関係機関の公表データなどから考えたことを記録しています。

研究者の人材育成に関する施策③(博士課程学生への経済的支援)

博士課程学生への経済的支援の重要性と二面性

 博士課程学生への経済的支援については、2006年の第3期科技基本計画において、「博士課程(後期)在籍者の2割程度が生活費相当額程度を受給」という目標が掲げられて以降、科学技術人材政策においても、重要な課題となっている。実際の博士課程学生の生活費相当額程度(年間180万円以上)の受給率は約1割に留まっているが、日本の現役学生の博士離れが進む中で、取組の充実が求められている。

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博士課程学生への経済的支援の状況(第91回人材委員会資料2より転載)

  大学院が、研究者養成等を目的とした教育の場であるとともに、我が国における最高レベルの研究を行う場であるという両面を持つように、博士課程学生についても、教育を受ける学生としての側面と、主体的に研究活動を行う研究者としての側面を有している。大学院制度においては、博士課程学生はあくまで学生の身分であるが、科学技術人材政策で着目すべき実際の研究活動においては、博士課程学生は研究者としての側面を有している。

 このような二面性は、科学技術人材政策における、博士課程学生への経済的支援においても現れている。学生としての側面に着目した支援として日本学生支援機構等の奨学金制度がある一方で、研究者としての側面に着目したものとしては、日本学術振興会の特別研究員(DC)等の施策が重要な役割を果たしている。

 

奨学金による支援

 現在、様々な民間団体や各大学独自の取組として、学生への奨学金による支援が行われているが、国の施策として最も大きなものは、独立行政法人日本学生支援機構奨学金である。独立行政法人日本学生支援機構奨学金は、「 経済的理由で修学が困難な優れた学生に学資の貸与を行い、また、経済・社会情勢等を踏まえ、学生等が安心して学べるよう、「貸与」または「給付」する制度」(同機構HPより)となっているが、大学院生が対象となるのは、このうち貸与型の奨学金である。

 貸与型の奨学金には、利子の付かない第一種奨学金と、利子の付く第二種奨学金があり、奨学金の額は、奨学金の種類ごと、学校の種類ごと等によって定められているが、例えば、博士課程相当を対象とした第一種については、80,000円、122,000円の2種類の貸与月額が設定されている。JASSO年報(令和元年度版)によれば、2019年度に新規採用された博士課程学生は、第一種で2,106人、第二種で184人となっている。

 また、日本学生支援機構奨学金では、大学院で第一種奨学金の貸与を受けた学生のうち、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた者について、奨学金の全額または半額を返還免除する制度を設けている。2019年度においては、この返還免除の制度により、博士課程学生の貸与終了者2,232人のうち、752人(全額免除 321人、半額免除 431人)が変換免除の認定を受けている。

 このほか、民間団体の奨学金や大学独自の奨学金による支援が行われているが、令和2年3月に公表された「博士課程学生の経済的支援状況に係る調査研究報告書」によれば、対象となっている回答者41,283人のうち、「日本学生支援機構奨学金制度」による支援を受けている者が5,507人(13.3%)、「大学独自の奨学金制度」が2,254人(5.5%)、「民間団体(企業等)等の奨学金制度」が959人(2.3%)となっている。

 なお、同調査において、授業料等の減免を受けている学生は、9,383人(22.7%)となっている。各大学における授業料減免の取組については、国立大学法人運営費交付金や私学助成(私立大学等経常費補助金)において、国からの支援が行われている。

 

研究活動に関する支援(特別研究員(DC)、リサーチアシスタント等)

  博士課程学生が自律的に研究活動を行うための支援としては、日本学術振興会の特別研究員(DC)の制度が、まず第一に挙げられる。特別研究員制度は、優れた若手研究者に、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与えることにより、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的としたもので、特別研究員(DC)においては、博士課程学生を対象として、優れた研究能力を有し、大学その他の研究機関で研究に専念することを希望する者を「特別研究員」に採用し、研究奨励金を支給している。採用期間は最大3年間で、期間中、毎月20万円の研究奨励金が支給される。また、別途、研究テーマを推進するために科研費の補助を受けることが可能である。この事業で毎年約1800人が採用されており、全体で約4300人の支援が行われている。

 また、競争的研究費等からの博⼠後期課程学⽣に対するリサーチアシスタント(RA)としての給与⽀給による支援も、博士課程学生の経済的支援において重要な役割を果たしている。「博士課程学生の経済的支援状況に係る調査研究報告書」によれば、「TA、RA 業務による給与・謝金」を受けている学生は8995人で、全体の21.8%となっている。

 博士課程学生を対象としたRAについては、学生支援を主目的とするものから、研究プロジェクトの遂行のためにPI等の下で研究に従事するものまで、様々な形態がみられるのが実情であるが、研究プロジェクト等のために学生を雇用する場合には、適切な対価の設定が重要である。し、適切な勤務管理の下、業務に従事した時間に応じた給与を支払うなど、その貢献を適切に評価した処遇5とすることが特に重要である。このことに関して、第6期科学技術・イノベーション基本計画においては、「競争的研究費や共同研究費からの博⼠後期課程学⽣に対するリサーチアシスタント(RA)としての適切な⽔準での給与⽀給を推進すべく、各事業及び⼤学等において、RA等の雇⽤・謝⾦に係るRA経費の⽀出のルールを策定し、2021 年度から 順次実施する」ことが盛り込まれている。

 このほか、第6期科学技術・イノベーション基本計画に記載されている新たな取組としては、「⼤学ファンドの運⽤益の活⽤やそれに先駆けた博⼠後期課程学⽣への⽀援を強化する取組などを進める」ことや、「⼤学が戦略的に確保する優秀な博⼠後期課程学⽣に対し、在学中の⽣活から修了後のポストの獲得まで 両⽅を⼀体的に⽀援する、⼤学フェローシップ創設事業を 2021 年度に開始し、所属機関を通じた経済的⽀援を促進する」といった内容が記載されている。これらを受けて、令和3年度政府予算においては、「世界レベルの研究基盤を構築するための大学ファンドの創設」「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業」といった新規事業が盛り込まれている。

 

(参考)

人材委員会(第91回)配付資料:文部科学省

JASSO年報 - JASSO

令和3年度文部科学省 予算(案)の発表資料一覧(1月):文部科学省