日本の研究人材・科学技術人材について考える

日本の研究人材・科学技術人材政策について考える

日本の研究人材・科学技術人材をめぐる状況や施策等について、政府や関係機関の公表データなどから考えたことを記録しています。

研究者の育成に関する施策②(産業界へのキャリアパス拡大)

博士課程修了者の多様な場での活躍の促進

 博士課程での人材育成の課題の一つは、修了者のキャリアパスの多様化である。博士課程における教育の目的は、元来、研究者の育成に置かれていたが、1989年の大学院設置基準の改正により、「その他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力」という内容が、博士課程の目的として加えられており、博士人材が、社会の多様な方面で活躍することが制度的にも期待されている。

 

(参考)大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)

(博士課程)
第四条 博士課程は、専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とする。

 

 特に、日本の研究者の多くが研究活動を行っている民間企業においては、博士号を持つ高度研究人材の活動が限定的であり、産業界における研究活動の充実や日本全体としての研究人材の流動性の向上という観点から、産業界への博士人材の活躍促進が大きな課題となっている。  

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各大学における取組の促進

 博士課程修了者の産業界を含めたキャリアパスの拡大については、各大学における博士課程教育における取組が最も重要である。特に、産業界との連携の下で、博士課程教育の充実を図ることは、研究力の向上と多様なキャリアパスへの意識拡大の両面から有効と考えられる。

 このような博士課程教育の充実を支援する施策としては、先にも述べた「博士課程教育リーディングプログラム」を挙げることができる。本事業では、「優秀な学生を俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーへと導く」ことを目的に掲げており、産学官の参画を得て学区いプログラムを構築・展開することとされている。本事業は、2011年度から実施されており、すでに修了者が輩出されているが、令和元年度版文部科学白書によると、修了者の43.5%が民間企業等に就職するなどの実績も見られるとのことである。

 また、2018年度から実施されている「卓越大学院プログラム」においても、海外トップ大学や民間企業等と「組織」対「組織」の連携を図ることとされており、産業界へのキャリアパスの拡大を含めた、各大学における博士人材育成の取組を支援する事業となっている。

 

産業界における取組の促進

 博士課程修了者の産業界へのキャリアパスを拡大するには、受け入れ側の産業界における対応が必要であり、博士人材の活用に関する産業界の側の意識や行動が変化していくことが求められる。第6期科学技術・イノベーション基本計画においても、「産業界は、課題を⾃ら設定しその解決を達成する、⾼度な問題解決能⼒を⾝に付けた博⼠⼈材が、その能⼒が発揮できる環境があれば、産業界等においても、イノベーションの創出に向け、やりがいを持って活躍できるということを認識することが必要である。」といった内容が盛り込まれている。

 また、科学技術・イノベーション基本計画においては、数値目標として、「産業界による理⼯系博⼠号取得者の採⽤者数:年当たりの採⽤者数について、2025 年度までに約
1,000 名増加(2018 年実績値は、理⼯系博⼠号取得者 4,570 ⼈中 1,151 ⼈)」と盛り込まれているほか、2021年度から「長期有給インターンシップ」を新たに実施すること等が盛り込まれている。「長期有給インターンシップ」については、産業界と⼤学が連携して⼤学院教育を⾏い、博⼠後期課程において研究⼒に裏打ちされた実践⼒を養成するものとされており、今後、具体的な制度設計等がなされていくものと思われるが、今後の展開が期待される。

 

(参考)

博士課程教育リーディングプログラム|日本学術振興会

卓越大学院プログラム|日本学術振興会

令和元年度 文部科学白書:文部科学省

第6期科学技術・イノベーション基本計画 - 科学技術政策 - 内閣府