日本の研究人材・科学技術人材について考える

日本の研究人材・科学技術人材政策について考える

日本の研究人材・科学技術人材をめぐる状況や施策等について、政府や関係機関の公表データなどから考えたことを記録しています。

博士課程における教育と研究(研究者育成に関する制度・体制⑤)

博士課程における教育と研究

 大学院は、学校教育法に根拠を置く教育機関であり、博士課程においても、課程制大学院の趣旨を踏まえた、体系的なコースワークが展開されている。しかし、こうした教育を受けるという学生の立場と同時に、博士課程学生は、自らの課題に基づいた研究活動を進めており、関係学会への参加や論文発表等の活動を行っている。また、大部分の学生は、指導教員の研究室の一員として、RAなどの制度も活用しながら、研究室の研究活動にも携わっていると考えられる。特に、自然科学系の研究室においては、大学院生の労働力が実質的に研究室の研究活動を支えているとの声を聞くことも多い。

 大学院が、研究者養成等を目的とした教育の場であるとともに、我が国における最高レベルの研究を行う場であるという両面を持つように、博士課程学生についても、教育を受ける学生としての側面と、主体的に研究活動を行う研究者としての側面を有している。大学院制度においては、博士課程学生はあくまで学生の身分であるが、実際の活動面では、研究者としての側面を有していることにも留意が必要である。

 このような二面性は、科学技術人材政策における、博士課程学生への経済的支援においても現れている。学生としての側面に着目した支援として日本学生支援機構等の奨学金制度がある一方で、研究者としての側面に着目したものとしては、日本学術振興会の特別研究員(DC)等の施策が重要な役割を果たしている。

 

 大学院教育の実質化という課題

 2000年代に、大学院の量的整備が図られたことは、以前の記事でも述べたが、この時期には、科学技術人材の養成・確保という観点からも、博士課程での人材育成が重要な課題として位置づけられるなど、大学院教育の充実に対する社会的要請が高まっていった。

 

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 そのような中で、2005年9月には、中央教育審議会答申「新時代の大学院教育-国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて-」が出され、課程制大学院制度の趣旨に基づいたコースワークの充実・強化や、円滑な博士の学位授与の促進など、大学院教育の実質化(教育の課程の組織的展開の強化)のための方策について提言がなされた。また、翌2006年3月には、この答申の内容を踏まえた「大学院教育振興施策要綱」が策定され、これに基づいて、関係事業等の具体的な施策が展開された。

 なお、大学院教育振興施策要綱の策定とこれに基づく施策展開については、2006年度から2010年度を計画期間とする「第3次科学技術基本計画」にも盛り込まれており、科学技術人材政策と連動して施策が推進されることとなった。

 博士課程における教育の充実は、優秀な学生の博士課程への進学促進や、博士課程修了者のキャリアパスの拡大を図る観点からも、極めて重要である。2017年4月からは、学校教育法施行規則が改正され、学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)、教育課程の編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)、入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)の策定・公表が各大学院に義務付けられるなど、社会的要請を踏まえた教育の充実をはじめとした、大学院教育の実質化に向けた取組が進展しているが、様々な社会の変化が加速化する中で、引き続きの取組が求められる重要な課題と考えられる。

 

(参考)

新時代の大学院教育-国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて-答申:文部科学省