日本の研究人材・科学技術人材について考える

日本の研究人材・科学技術人材政策について考える

日本の研究人材・科学技術人材をめぐる状況や施策等について、政府や関係機関の公表データなどから考えたことを記録しています。

博士課程教育の制度(研究者育成に関する制度・体制①)

大学院制度の概要

 研究者の育成に関する制度として、まずは大学院に関する制度を概観したい。学校教育法において、大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥を究め、または高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とすることが定められている(学校教育法第99条第1項)。

 そして、大学院の課程には、修士課程、博士課程、専門職課程の3種があるが、研究者育成の中核となるのは博士課程である。大学院設置基準において、博士課程は、専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とすることが定められている(大学院設置基準第4条1項)。

 一般的には、大学の学部を卒業した後、大学院の修士課程に進学し、その後、博士課程に進学するというイメージが持たれていると思われるが、大学設置基準上は、博士課程は、大学卒業後の標準修業年限は5年とされており(同基準第4条2項)、前期2年(博士前期課程)と後期3年(博士後期課程)に区分するもの、区分を設けない一貫性のもの(一貫制博士課程)、後期3年のみの課程のものが認められている(同条第3項、第5項)。前期と後期に区分する場合の博士前期課程は、修士課程として取り扱うこととされており(同条第4項)、学校基本調査等においては、一貫制博士課程の1、2年次についても、修士課程として扱われている。なお、医学、歯学等の6年制の学部から進学するものについては、4年制の博士課程が置かれている(同基準第44条)。

 博士課程の修了者には、博士号の学位が与えられるが、一定の単位を修得し、必要な研究指導を受けた上、当該大学院の行う博士論文の審査及び試験に合格することが必要である(同基準第17条)。これらの修了要件を満たすことができず、博士号が得られない場合には、満期取得退学という扱いとなる。

 

入学者と在籍者のアンバランスの理由(年限超過学生の増加等)

 なお、標準修業年限(通常3年)を超えて在学する学生(最低在学年限超過学生)は、2020年度で、約1万7千人であり、博士課程学生全体の22.5%となっている。男女別で見ると、男性が約1万人、女性が約7千人であり、女性の割合が高くなっている。10年前の2010年度には、年限超過学生数は、約1万6千人で、全体の21.1%であり、緩やかな増加傾向にある。社会人学生の長期履修などの場合もあると考えられ、一概に評価はできないが、満期退学者数と同様に、円滑な博士の学位授与の促進という課題を反映するデータとして見ることもできると考えられる。

 博士課程の入学者・修了者が約1万5千人であり、この3学年分として計算すると約4万5千になることから、博士学生数が約7万5千人であることを疑問に思われる方もいると思われるが、上記の年限超過学生の存在や保健分野の4年制課程の学生の増加等が、こうした数字のアンバランスの背景となっている。

 

(参考)

大学院設置基準 - Wikipedia